日本プライマリ・ケア連合学会誌
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Print ISSN : 2185-2928
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原著(研究)
プライマリ・ケアの医療現場における急性薬物中毒患者診療での留意点
増井 良則津田 尚法西山 毅國松 淳和水谷 友紀森山 純江吉川 玲欧足立 洋希濱崎 秀崇森川 博久本田 和弘金子 礼志三島 修一吉澤 篤人柳内 秀勝
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2011 年 34 巻 2 号 p. 115-123

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抄録

【目的】急性薬物中毒患者の効率的かつ安全な治療を確立するため, 患者の臨床的特徴の入院期間に及ぼす影響を検討した.
【方法】対象は2008年4月から2009年1月までに当院救急外来を受診後入院となった急性薬物中毒患者89例. 入院期間が7日未満であった群 (短期入院群) と7日以上の群 (長期入院群) に分け, 年齢, 性差, バイタルサイン, 服薬内容, 施行した治療の比較検討を行った.
【結果】短期入院群と長期入院群の臨床的特徴を解析した結果, 性差および重症意識障害の頻度に2群間で有意な差を認めなかったが, 長期入院群の年齢が有意に高いことが明らかになった. また, 年齢と在院日数の間に有意な正の相関を認めた. 長期入院群を意識障害レベルにて分類し入院期間延長の要因を検討した結果, Japan Coma Scale (JCS) I, IIの軽症群では精神科的入院適応が多く, JCS IIIの重症群では身体的疾患合併が有意に多かった. また, 当院では重症急性薬物中毒患者の治療に直接血液灌流 (direct hemoperfusion, DHP) を施行している. DHP施行症例の検討結果, 過量服薬から比較的早期にDHPが開始された症例では在院日数が短い傾向を示した.
【結論】加齢が身体的疾患の合併や治療期間の延長に関わっているため, プライマリ・ケアの医療現場において中高年の急性薬物中毒患者の診療にあたる際は, 身体的疾患合併の有無を検索することが重要であると考えられる. また, 重症急性薬物中毒患者の治療におけるDHPの適切な使用に関しては, 今後更なる検討が必要であると考えられた.

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© 2011 一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
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