2017 年 40 巻 2 号 p. 86-90
目的:徳之島の医療施設で経験した14例の悪性貧血について臨床的および疫学的検討を行った.
方法:平成21年3月より平成26年5月までに当院で悪性貧血と診断した14例を対象として,後方視的に検討した.
結果:全例50歳以上で,高齢女性に多かった.14例のうち6例は特に症状はなかったが,定期検査で大球性貧血を認めたことが契機で,悪性貧血の診断に至った.この期間における当院の年間発症数は中央値3(95%confidence interval[CI]:1.25-3.42)であった.
結論:徳之島での今回の我々の成績では,悪性貧血の10万人当たりの年間発症率が,本邦の従来の報告例に比し,大幅に高い可能性があることが判明した.その理由として,高い高齢化率,看過されやすい疾患であること,民族的ないし地域的特異性が関与している可能性を指摘した.悪性貧血の罹患率は従来の報告より高い可能性があり,貧血の鑑別診断として,悪性貧血を念頭に入れて診療を行う必要がある.