日本プライマリ・ケア連合学会誌
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原著(症例報告)
タムスロシン塩酸塩内服後に起立性低血圧が顕在化したACTH単独欠損症による続発性副腎機能低下症の一例
坂口 大介早川 学中村 行人枝元 真人石井 義洋
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2023 年 46 巻 2 号 p. 62-66

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抄録

前立腺肥大症に対するタムスロシン塩酸塩の内服開始後に出現した起立性低血圧の精査の結果,ACTH単独欠損症による続発性副腎機能低下症の診断に至った一例を経験した.起立性低血圧は一般診療で頻繁に遭遇する症候であり,急性発症の起立性低血圧を認めた際は,薬剤の影響や,出血による循環血漿量減少などの他に,副腎機能低下症が鑑別疾患に挙げられる.多疾患併存により内服薬剤が複数に及ぶ高齢患者の起立性低血圧は,副腎機能低下症の診断が困難となる可能性がある.また,原発性副腎機能低下症と比較し,続発性副腎機能低下症では,レニン―アンギオテンシン―アルドステロン系が正常に作用するため起立性低血圧を呈しにくいとされており,起立性低血圧を契機にACTH単独欠損症の診断に至った症例報告はこれまでにない.今後は,高齢者の起立性低血圧の原因として,ACTH単独欠損症による続発性副腎機能低下症を鑑別疾患に挙げる必要がある.

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© 2023 一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
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