2006 年 129 巻 p. 3-41
本稿は日本語における外来複合語の短縮形(例:ポケモン),エコーワード(例:めちゃくちゃ)および対立語(例:白黒)といった3種類の2項からなるnon-headed複合語を対象に,これらの語の音韻構造,特に前項および後項における頭の音素の分布と頻度を統計的に検討する.その結果として,3種類の複合語の適格性は,各項の頭の音素の性質によって決定されるということを明らかにする.統計的に有意な最も際立った特徴として,ア行(つまりゼロ子音)で始まる要素は複合語の第2項として現れることが非常に少なく,カ行で始まる要素は第2項として最も現れやすいということが言える.本稿においては,これらの音素上の偏りは,知覚的および音韻的な要因に規定された音力階層によって説明され,またこのような複合語の音韻構成は機能的な動機付けによっていると主張する.