言語研究
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Print ISSN : 0024-3914
論文
無標形の発現としてのアスリ諸語の重複
宮腰 幸一
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2006 年 129 巻 p. 43-89

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抄録

本稿は,独立に動機付けられた無標構造が新たな機能のために利用され,その姿を現すという意味の「無標形の発現」について論じる.この意味での無標形の発現は様々な言語現象に見られるが,本稿では重複における無標の韻律構造の発現に焦点を当て,それをアスリ諸語の重複を例に論じる.アスリ語派の言語には数種類の重複があり,そのうちのいくつかは韻律・形態論的に一見特異に見える性質を持っている.本稿は,そうした一見特異な重複が,通言語的によく見られる重複と同じように,上で述べた意味での無標形の発現現象として説明できることを示す.また,今後の研究の方向性として,そもそもなぜ言語にはそうした無標形の発現がよく見られるのかという問題を提起し,その背後にあると思われる一般的な制約の探究の必要性と重要性を指摘する.

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© 2006 日本言語学会, 著者
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