言語研究
Online ISSN : 2185-6710
Print ISSN : 0024-3914
フォーラム:The World Atlas of Language Structures (WALS)と類型論的分析
格の多様性について―言語構造のワールドアトラス(WALS)を使用して―
野瀬 昌彦
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2006 年 130 巻 p. 109-123

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抄録

本論文では,「言語構造のワールドアトラス」(WALS)を使用し,名詞の形態論的特徴である「格の数」を特に取り上げた.「格の数」についてWALSを使用して世界中の言語を観察すると,まったく格標示を持たない中国語やアラビア語のような言語から,格が豊富なハンガリー語やネズパース語まで,世界で多様な分布を示す.本研究は,WALSの「格の数」の特徴で観察された,格の数が10以上ある24言語を対象にした.それらの24言語について,いくつの格を持つか,どのような格を持つか,格の数の豊富さと他のWALSの特徴に関連性があるかを検証した.その結果,格を豊富に持つ言語は地域的には欧州からアジア,北南米,オーストラリア,そしてパプアニューギニアと広く分布することが判明した.また,観察される格としては,場所格と副詞格を多く持ち,さらに格を豊富に持つ言語は,SOV語順が支配的で,後置詞を好む傾向がある.

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© 2006 日本言語学会, 著者
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