言語研究
Online ISSN : 2185-6710
Print ISSN : 0024-3914
130 巻
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
論文
  • 上野 善道
    2006 年 130 巻 p. 1-42
    発行日: 2006年
    公開日: 2021/09/15
    ジャーナル フリー

    現代方言と古文献資料に基づき,本土諸方言のアクセント祖体系を考える.高起群には従来の「高高高高…」の式音調を改訂して「高高中中…」の下降式を建てる.低起群には去声始まりのアクセント型などを組み込む.全体として,下降式と低進式の2つの式,それに昇り核と下げ核の2つの核からなる,従来よりも対立数を増やした私案を述べる.

  • 吉田 和彦
    2006 年 130 巻 p. 43-82
    発行日: 2006年
    公開日: 2021/09/15
    ジャーナル フリー

    3人称単数中・受動態動詞に生じた-a → -taと-a → -attaという2つの形態変化は,ヒッタイト語の歴史時代になお働いている.この事実に加えて,-attaを持つ形式が古期ヒッタイト語にみられないこと,および多くの命令形にa-クラスの特徴が保存されていることから,-taを持つ中・受動態動詞が最初につくられたのは,ヒッタイト語の先史のそれほど古い段階でないことが分かる.さらに,-taが現在形よりも過去形に顕著にみられることから,ta-クラスの中・受動態動詞の多くがつくられたのは,現在語尾に生じた破擦音化(*-ti>*-tsi)の後と言うことができる.この分析に従うならば,アナトリア祖語および印欧祖語に再建される3人称単数中・受動態語尾は1次語尾*-or,2次語尾*-oということになる.一般に受け入れられている1次語尾*-tor,2次語尾*-toは印欧祖語に遡らず,アナトリア語派の祖語からの離脱以降につくられたと考えられる.

フォーラム:The World Atlas of Language Structures (WALS)と類型論的分析
  • 堀江 薫
    2006 年 130 巻 p. 83-87
    発行日: 2006年
    公開日: 2021/09/15
    ジャーナル フリー

    近年,言語類型論の分野においては,危機言語の記録・保存・再活性化と類型論的データベースの共有化という二つの目標に向けた様々な取り組みが行われている.後者に関して,マックスプランク発達人類学研究所の言語学部門の類型論研究者が世界の類型論研究者の協力を得て,2005年にThe World Atlas of Language Structures (WALS)を刊行した.これは,世界の言語の音韻,語彙,形態,統語的特徴の地理的分布を,視覚的な理解しやすさに対して様々な配慮のなされた142枚の世界地図によって示した書籍とCD-ROMからなるデータベースであり, 今後の類型論研究にとって非常に重要な貢献を果たすものと期待される.本論は,WALSを用いた類型論研究の可能性を示す二つの論文およびそれらの論文に対するコメントからなるフォーラムの序論をなすものである.

  • Prashant Pardeshi, Peter Hook, Colin P. Masica, Hajar Babai, 井土 , 堀江 , ...
    2006 年 130 巻 p. 89-108
    発行日: 2006年
    公開日: 2021/09/15
    ジャーナル フリー

    アジア言語の多くにおいては,「食う・食らう等(以下「EAT」で統一)」に相当する動詞の主語が「動作主」と「主題,被動作主,経験者」という,いわば相反する意味役割を担う,一群の表現形式を有している.本研究の第一の目的は,アジア諸語における,基本的な経験を表す「EAT」動詞の意味拡張の地理的分布の特徴づけを行うことにある.本研究では「EAT」表現の代表的な用法の地域的分布をWALSの地図上に表示する.その結果,「EAT」動詞のメタファー的拡張のうちある種のものはどの言語にも見られる反面,南・中央・東北アジアのSOV型言語地域言語接触に関する重要な先駆的業績であるMasica(1976)で示された特定の地域のみで観察される拡張も確認された.さらに,本研究では,言語接触が「EAT」表現の拡散・収束に重要な役割を果たし続けていくことには疑いがない反面,意味拡張の放射状のネットワークが,言語接触と独立して補完的な要因として働いている可能性を提唱する.

  • 野瀬 昌彦
    2006 年 130 巻 p. 109-123
    発行日: 2006年
    公開日: 2021/09/15
    ジャーナル フリー

    本論文では,「言語構造のワールドアトラス」(WALS)を使用し,名詞の形態論的特徴である「格の数」を特に取り上げた.「格の数」についてWALSを使用して世界中の言語を観察すると,まったく格標示を持たない中国語やアラビア語のような言語から,格が豊富なハンガリー語やネズパース語まで,世界で多様な分布を示す.本研究は,WALSの「格の数」の特徴で観察された,格の数が10以上ある24言語を対象にした.それらの24言語について,いくつの格を持つか,どのような格を持つか,格の数の豊富さと他のWALSの特徴に関連性があるかを検証した.その結果,格を豊富に持つ言語は地域的には欧州からアジア,北南米,オーストラリア,そしてパプアニューギニアと広く分布することが判明した.また,観察される格としては,場所格と副詞格を多く持ち,さらに格を豊富に持つ言語は,SOV語順が支配的で,後置詞を好む傾向がある.

  • 角田 太作
    2006 年 130 巻 p. 125-129
    発行日: 2006年
    公開日: 2021/09/15
    ジャーナル フリー

    プラシャント・パルデシの論文も野瀬昌彦の論文も,通言語的なデータを用いて行う研究の見事な成果である.

    パルデシ他の論文について.「食べる」という動詞を用いる表現がアジアの広い地域の言語に見られることを示した.人間は,食べることと強烈な衝撃を受けることに,何か共通点を感じるのであろう.これは普遍的あるいは普遍的に近いものかもしれない.そのため,これらのこれほど広い地域の言語に見られるのであろう.もしそうなら,このような表現がオーストラリア原住民語に見あたらないのは不思議である.

    野瀬論文は以下のことを指摘した.(i)11以上の格を持つ言語が後置詞を持つこと.(ii)場所的な格と副詞的な格を多数持つ言語がSOVである傾向.この二つの点は機能的な観点で予想に反する.従って興味深い.また,(iii)場所的な格と副詞的な格を多数持つ言語が後置詞を持つ傾向がある.しかし,私の推測では,その後置詞の数は少ないであろう.

書評・紹介
feedback
Top