2011 年 139 巻 p. 133-144
Clahsen and Felser(2006)は,これまでの第二言語(L2)文処理研究を検証し,L2学習者は意味役割等の語彙情報は母語話者と同じように処理できるが,統語情報については上級学習者であったとしても扱うことはできないとするShallow Structure Hypothesis(SSH)を提案している。本研究では,初級・中級の日本人英語学習者が能動態,受動態,分裂文をどのように処理するのか検証し,このSSHの妥当性について議論する。実験の結果,1)初級学習者は文処理過程において語彙情報を利用する,2)中級学習者は文構造に依存した文処理を行う,ということが明らかになった。したがって,本研究では,L2学習者でも習熟度が高まると文構造に依存した文処理を行うようになると主張し,さらにSSHでは,全てのL2学習者の文処理方略を説明できるわけではないことを提案する。