本論は,主要部内在型関係節と主節の時制形式(ル/タ形)の組み合わせに応じて,主節事態,従属節事態,発話時の間でどのような時間的順序関係が成り立つかを調べ,日本語の主要部内在型関係節構文の時制解釈を包括的に記述することを目的とする。時制解釈のタイプによって,主要部内在型関係節は,従属節の絶対/相対時制の区別に応じてル/タ形の交替を許すA類,時間的順序関係からして従属節が絶対時制をとると考えられるB類,時間的順序関係だけからでは従属節の時制を確定できないC類の3つに大きく分類できることを主張する。さらに,C類については時間副詞との共起可能性によって時制を確定できるかどうか探る。最後に,これらの下位分類のうち,三原(1992)の「視点の原理」はA類に関してのみ完全に妥当し,それには意味的・機能的な動機づけがあることをみる。