2013 年 144 巻 p. 103-118
Nishimura(2003, 2006)は,日本語の借用語における有声促音が他の有声阻害音と共起する場合,無声化し得ると指摘している。この無声化のパターンについては,これまで理論・実験の観点から多くの分析があり,理論的諸問題の解決に貢献してきている。しかしながら,自然発話のデータを基にした研究はほとんど例がなく,社会言語学的な要因も仮定されていない。これらの背景を踏まえ本稿にて『日本語話し言葉コーパス』を用いて検証を行った結果,以下の2点が確認された。まず先行研究において確認されている,必異原理が有声促音の無声化を促進する効果が自然発話データにおいても確認された。次に,多くの言語外的・社会言語学的要因が無声化の適用・不適用に影響を与えているということが確認された。本稿における取り組みにより,これまでの研究で注目されることのなかった無声化のパターンを統御する潜在的要因が新たに明らかとなった。