言語研究
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日本語の等位接続詞「と」の重複形について
浅田 裕子
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2014 年 145 巻 p. 97-110

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抄録

本稿は,「りんごとバナナとを食べた」の例にあるような日本語の等位接続詞「と」の重複形(the repetitive coordinator to)(以下,「RC-と」)の分布を検証する。先行研究においては,「RC-と」は随意的要素であると想定されているが(Fukui and Sakai 2003, Ito and Chaves 2008, Vermeulen 2008など),その分布は,次の3種類の観察が示すように,従来想定されているより制限的である:(i)「RC-と」が連体修飾節の主語位置に現れると,主格助詞の「が・の交替」が妨げられる;(ii)「RC-と」は,コピュラ文の述部に現れることができない;(iii)「RC-と」は,焦点化詞「だけ」とは共起できるが,「さえ」及び「も」とは共起できない。また,(iii)の観察に関して本稿が呈示するデータは,Vermeulen(2008)が提案する「RC-と」の分析にとって問題となる。これらの議論を踏まえ,本稿は,「RC-と」は「だけ」に似た排他性(exhaustivity)の含意を持つ焦点化詞であると提案し,この提案が一連の観察された「RC-と」の特性を捉えることができることを示す。

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© 2014 日本言語学会, 著者
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