言語研究
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Print ISSN : 0024-3914
論文
古典満洲語の「同格の属格」について
早田 清冷
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2015 年 147 巻 p. 7-30

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抄録

本研究は満洲語の「同格の属格」と言われる現象の分析である。満洲語は日本語とは異なり,「女である私達」を表す際に,men-i(私達の)hehe niyalma(女)のような第一名詞句が定であり属格形で現れる表現が可能である。本稿ではこの第一名詞句が従属節の属格主語であると主張する。コーパス中のコピュラ連体形の用法を分析する事により,1「コピュラに関する従来の記述に反してコピュラの未完了連体形がゼロ(音形なし)になり得る(むしろ通常はゼロである可能性が高い)」事を示す。また2「このゼロコピュラの主語もそれ以外の動詞の主語同様に属格主語になり得る」事も指摘する。この1,2により,満洲語の「第一名詞句が属格形になる同一指示の名詞連続」NP1i -i+NP2i(NP: 名詞句,-i: 属格標識,i: 同一指示)を名詞句「NP1に属するNP2」ではなく基底でコピュラ終わりである従属節「NP1がNP2である(の)」と考えることが出来る。

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© 2015 日本言語学会, 著者
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