2015 年 147 巻 p. 31-55
日本語に,SVO言語で観察されるような主要部移動が存在するかどうかは,少なくとも表面上は明らかではない。これは,日本語が主要部後続型言語であるため,主要部移動の結果として予測される語順が主要部移動の関与しない派生のもとで予測される語順と同一であることに起因する。本論文では補部のテ節,付加詞のテ節の統語的振る舞いに着目し,Vテの連鎖が多くの場合語順に影響を与えず,主節に主要部移動すると主張する。また,省略現象においてVテの連鎖が省略領域から抜き出されていることを示す。さらに,この種の主要部移動が形態的な語形成を伴わない主要部移動であることも指摘する。