言語研究
Online ISSN : 2185-6710
Print ISSN : 0024-3914
論文
日本語の使役文の文法的な意味
――「つかいだて」と「みちびき」――
早津 恵美子
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 148 巻 p. 143-174

詳細
抄録

使役文の文法的な意味については様々な分析がなされているが,広く知られているものとして「強制」と「許可」に分けるものがある。本稿ではこれとは異なる観点から「つかいだて(他者利用)」と「みちびき(他者誘導)」という意味を提案する。この捉え方は「強制:許可」という捉え方を否定するものではないが,原動詞の語彙的な意味(とくにカテゴリカルな意味)との関係がみとめられること,それぞれの使役文を特徴づけるいくつかの文法的な性質があること,この捉え方によって説明が可能となる文法現象がいくつかあること,という特徴がある。そのことを実例によって示し,この捉え方の意義と可能性を明らかにした。そして,「強制:許可」と「つかいだて:みちびき」との関係について,両者はそれぞれ使役事態の《先行局面/原因局面》と《後続局面/結果局面》に注目したものと位置づけ得ることを提案した*。

著者関連情報
© 日本言語学会, 著者
前の記事
feedback
Top