言語研究
Online ISSN : 2185-6710
Print ISSN : 0024-3914
論文
南琉球宮古語の疑問詞疑問係り結び
――伊良部集落方言を中心に――
衣畑 智秀
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 149 巻 p. 19-42

詳細
抄録
疑問詞疑問専用の係助詞を持つ方言では,その係助詞が文を疑問文化しているのかは一見明らかでない。この問題について,本稿では,南琉球宮古語の伊良部集落方言を取り上げ,この方言では係助詞gaが文を疑問文化していることを示す。この方言では,直接疑問文では疑問詞と係助詞の分布は一致しているが,間接疑問文では分布が異なり,係助詞gaは話し手が節の答えを知らないなど疑問詞節の答えに対する確信度が低い場合にのみ使われる。この疑問詞節の答えを知らないということを疑問文の定義的性質とすると,係助詞gaが疑問文化の機能を担っていると言うことができる。しかし,他の宮古諸方言話者の中には,この係助詞の疑問文化の機能が認められないものもいる。ここには,既に形態的な呼応を失っている宮古語の係助詞が,さらに,文のタイプを決めるという係り結びの機能までを失っていくプロセスが観察される。
著者関連情報
© 日本言語学会, 著者
前の記事 次の記事
feedback
Top