言語研究
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論文
契丹語の複数接尾辞について
武内 康則
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2016 年 149 巻 p. 1-17

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抄録
本稿では,契丹語の名詞類に用いられる複数接尾辞について扱った。契丹語の複数接尾辞として-ɲɛr,-d,-s,-dʒ,-ɲ,-lを認め,それらの使用される条件について考察を加えた。複数接尾辞の分布ついてこれまでに十分検討されたことはなかったが,筆者の調査の結果,接尾辞の分布は接続する語の意味と深く関係していることが明らかとなった。さらに,語と接続する接尾辞の関係を有生性の階層の観点から捉えうることを示した。具体的には,-ɲerは階層の上位の人称代名詞及び親族名詞に,-dは-ɲerに比べて下位の生物名詞・無生物名詞に用いられ,-s,-ɲはさらに下位のより抽象性の高い無生物名詞・形容詞に用いられる。これらの接尾辞の選択が契丹語の品詞・名詞クラスと関係している可能性についても述べた。
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© 日本言語学会, 著者
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