言語研究
Online ISSN : 2185-6710
Print ISSN : 0024-3914
論文
It is IIt is me 構文のコーパス基盤変異理論的考察
――ゆれがほぼ完了した統語変化のCOHAを活用した実時間調査――
久屋 愛実
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2021 年 159 巻 p. 7-35

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抄録

本稿は,ほぼ完了したとされる「it is人称代名詞」構文における主格から目的格への交替を,コーパス基盤変異理論的視点(CVL)から捉えた実証的研究である。先行研究は新変異形がすでに一般に普及していることを示唆するが,この変化の全容を捉えた実証データは管見の限り存在しない。そこで,通時的コーパスCOHAの実時間データを計量的に分析し,変化のほぼ全過程を予測する多変量モデルを提示した。その結果,変化は(1)一人称単数形(I/me)で最も早く進行したこと,(2)I/meでは20世紀後半までにほぼ完了したこと,(3)非縮約構文(it is)よりも縮約構文(it’s, it isn’t等)の環境下で先に拡大したことが判明した。本研究は,コーパス言語学と変異研究の利点を統合させた分野横断的アプローチにより,長年にわたり議論されてきた統語変化の過程を実証的,包括的かつ詳細に記述することに成功した点で,言語変異・変化研究に資する。

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© 日本言語学会, 著者
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