抄録
自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)のアセスメントでは,症状や問題行動の背景にあるASD特性をいかに評価するかが課題である.本研究では,ASD特性の幅広い評価を目的に,従来のASD特性に関する自記式質問紙の課題と考えられる自己理解力や社会文化的影響を考慮したASD特性評価尺度の作成を試みた.調査1では,ASDの診断基準や既存の尺度等を参考に質問項目を作成し,大学生279名に実施した.尺度構造を検討した結果,ASD特性評価尺度として「杓子定規な行動様式」「状況察知力の弱さ」「消極的な対人交流」の3因子が抽出され,おのおのに高い内的一貫性が認められた.調査2では,ASD特性評価尺度とAQの関連の検討を目的に,大学生205名に両尺度を実施した結果,弱いまたは中程度の相関がみられ,併存的妥当性が示された.本尺度は,簡便に使用可能な自記式質問紙としてASD特性の評価に有用な可能性がある.今後,診断閾下を含めASD者に実施し,臨床群への有用性を検討したい.