言語研究
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論文
方言の地域差から年齢差へ
――庄内浜荻追跡調査の多重対応分析――
井上 史雄半沢 康
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2022 年 162 巻 p. 63-89

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抄録

本稿では山形県庄内地方で行われた方言調査データに多重対応分析を適用した結果を報告する。江戸時代の方言集『浜荻』掲載406語の残存率について1950年に3世代,2018年に4世代の調査が行われ,長期の言語変化が分かった。「年齢柱方言地図」と「単純化グロットグラム」を作図して考察した。140年にわたる世代差を踏まえ,20世紀の地域差の大きい時期から,21世紀の世代差の大きい時期に移行したことを論じる。

多重対応分析によって方言の分布と変化の複雑なパターンを要約し,全体傾向を把握できた。第1軸には140年という長さの年齢差が表れ,第2軸以下には庄内方言南北80 kmの地域差が示された。南北差が大きいので,鶴岡からの徒歩距離を計測して「単純化グロットグラム」を作成し,代表的な8語のうち3語を例示した。地方的周圏分布が見られるとともに,現在の若い世代の急速な方言衰退が見られ,他方中学生による方言使用も観察された。

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© 2022 日本言語学会, 著者
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