言語研究
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論文
日本語量化文の解釈と処理方略
井上 雅勝藏藤 健雄松井 理直
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2022 年 162 巻 p. 91-118

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抄録

本研究では,量化詞を伴う日本語の他動詞文(Q)NP1-が(Q)NP2-をV1(Q=「すべて」または「ほとんど」)がどのように解釈されるかを独自の方法により調査した。その結果,回答の半数以上で量化の三部構造が形成されていない非TPS(tripartite structure)量化による解釈が見いだされた。次に,(Q)NP1-が[(Q)NP2-をV3] N4-をV5(N4は関係節主要部名詞句)のような関係節埋め込み文の読み時間を測定する2つの実験を行い,非TPS量化解釈がよりなされやすい場合に,N4の読み時間が長くなること(ガーデンパス効果)を明らかにした。本稿では,量化文が非TPS量化として解釈されると即時に解釈が決定されるのに対し,量化の三部構造にもとづくTPS量化では解釈決定が一時的に遅延されるという仮説の観点から,これらの結果およびその理論的意義を論議する。

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© 2022 日本言語学会, 著者
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