抄録
複雑な量子系では、自由度を増すにつれて、自由度が小さく単純な量子系(例えば水素原子)にはないような、不確定性原理とは別の原理的な操作限界が出てくるらしい。それをしらべるために、ここでは、小さなカオティックな量子系を外場で揺すった場合を考察する。この場合、マクロ系とは異なり、はじめの状態が状態密度の凹凸のどのあたりにあったかによって、揺さぶり後のエネルギー変化の符号が異なることがわかった。つまり、適当なエネルギー分解能δE で見た状態密度が高い方向に向かって状態が遷移する傾向があった。このような一方向性の存在は、何らかの操作限界を示唆していると考えられる。