2020 年 21 巻 1 号 p. 7-13
本研究は、臨床経験3年以上の看護師におけるエラーを指摘することへの抵抗感に関連する要因を明らかにし、医療安全対策への示唆を得ることを目的とした。A県内200床以上の病院に勤務する臨床経験3年以上の看護師1266名(有効回答率61.3%)を対象に、属性、勤務状況、失敗傾向、エラーの体験、ストレス反応、医療機関の安全風土、エラーを指摘することへの抵抗感について無記名の自記式質問紙調査を行なった。エラーを指摘することへの抵抗感をはかる場面として特定した「嫌な顔をされるかもしれないと思うとき」における抵抗感の得点を従属変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)の結果、「認知の狭小化」、「ベッドのストッパーを止め忘れた」、「他の人に知られることがない限り、ミスしたことを黙っていても許される雰囲気がある」は抵抗感を高める要因であり、「医療安全に関する難しい議論もとことん話し合う、という雰囲気がある」、「職位が高い」、「人と話すのが楽しい」は抵抗感を低くする要因であった。看護師のエラーを指摘することへの抵抗感を軽減するためには、事故防止に積極的に取り組む風土を醸成していくとともに、エラーの体験を活かしていけるような、また、ポジティブな反応を高めるような支援が必要であることが示唆された。