地下生物圏の環境で生命が誕生したと考えられているが、このシステムのポイントは3つに要約できる: 1)生命に必須のアミノ酸などの物質が熱水地帯で合成できること, 2)次に,化合物が大きな分子になり,3)自己複製ができるところまでシステムが進化すること.現在のところ有機物の高温,高圧下での安定性についての知見が欠けており,室内実験でこれらをおさえていくことが最初のステップである.たんぱく質等は,微生物も含めた地球上の生体の主要化合物である.実験では堆積物と純粋なNaClの 3%の溶液とを100-250℃で,240時間反応させ、加水分解性アミノ酸を分析した.その結果、200℃以上ではアミノ酸は完全に分解しており、地球上に最初に誕生した生命体がアミノ酸化合物を主体としたなら,地球の冷却が進行し,温度<200℃という比較的低温条件下で最初の生命が存在した可能性が高いことを示唆している.