抄録
南部マリアナ背弧海盆拡大中心軸およびその周辺で発見された熱水サイトから熱水試料を採取し、その化学分析からこの海域の海底熱水系の化学的特徴を明らかにした。 Off-ridge 海山の高温サイト(Pika Site)の熱水化学組成は、中央海嶺型熱水組成の特徴に良く一致する。特にFe濃度が高く、より還元的な条件での熱水反応が期待できる。 拡大軸裾野に位置する高温サイト(Archaean Site)の熱水化学組成は、Kにやや富む傾向が見られた。 拡大中心軸の低温サイト(Fryer Site) の熱水化学組成は、Archaean Site に似た組成を持つ熱水端成分が存在し、海水との混合により希釈されていると考えることができる。しかし、いくつかの成分については、この単純混合から明らかにはずれた傾向を示す。最も顕著なH2Sの欠乏から、海底面下での微生物活動による消費があることが期待できる。