抄録
堆積岩には、その岩石の形成された頃の地球表層環境の特徴が、窒素などの元素の化学組成や同位体比組成という形で記録されている。この研究では始生代の表層環境、特に生命に関する情報収集を目指し、Kitty’s Gap(西オーストラリア、ピルバラクラトン)に産する前期始生代(34.5Ga)チャート試料の窒素同位体比を測定した。始生代は遊離酸素の増加が始まるなど地球表層環境が大きく変化したと考えられる時期であるが、窒素の同位体比分布は主に生化学反応によって決定されるため、堆積岩に含まれる窒素の同位体組成が当時の様子を知る手がかりになると思われる。本チャート試料は数ミリの縞模様を呈し、有機物を含む層があると報告されているため、今回はこれを層ごとに分離して測定する。