抄録
ユーラシア大陸東縁に位置する典型的な縁辺海の1つであるオホーツク海の環境諸因子と生物生産の関係について、レビューする。オホーツク海は世界で最も低緯度に位置する季節海氷域であるという特徴を持つが、海氷と生物生産の関係については、一般に正確に理解されていない。オホーツク海では、海氷による直接の生物生産への影響、すなわちアイスアルジー等による一次生産の割合は小さく、むしろ、その影響は大陸棚での高密度水塊の形成と中層への水塊の沈み込みを介して、アムール川などの河川由来の栄養を用いて大陸棚上で生産される莫大な量の有機物を、外洋遠くへ水平輸出する役割を果たしている。このことはオホーツク海の中層水に特異な高次生態系を出現させるのみならず、千島海峡部での鉛直混合を経て、再び表層に多量の河川起源の栄養塩を回帰させることで、北西部北太平洋の一次生産にも大きな影響を果たしている可能性がある。