抄録
縞状炭酸塩堆積物は新しい層が古い層を覆いつつ沈殿するため過去に堆積した状態を保持している。陸域に存在する縞状炭酸塩堆積物として鍾乳石とトゥファが挙げられる。これらは同程度の厚さの堆積物を比較した場合、石筍は成長速度が遅いために数万年単位の情報が蓄積しているのに比べて、トゥファはシアノバクテリアによる光合成により炭酸カルシウム沈殿が促進されるため沈殿速度が著しく速く、石筍ほど長期間にわたる環境情報を保持してはいない。しかし、年縞に相当する層がmm単位で存在するため、石筍に比べて層単位の分析が容易である。石筍を用いると有史以前の長期にわたる環境情報の復元が可能であり、トゥファを用いると近年の環境情報の詳細な変動を観測することができる。本報告では、秋吉台から採取された石筍から過去の人為的な植生の変動を、平尾台から得られたトゥファから北九州工業地帯の大気汚染の変動について報告する。