抄録
熱帯域のサンゴ礁に分布するイシサンゴ類は刺胞動物門花虫綱六放サンゴ亜綱に属し、サンゴ礁を形成するため造礁サンゴと呼ばれている。イシサンゴ類にはこの他、約1500mまでの大水深の海底に生息する冷水サンゴと呼ばれているグループがある。一方、宝石サンゴは近縁の八放サンゴ亜綱に属し、同じく約1500mまでの大水深を生息範囲とする。造礁サンゴおよび冷水サンゴと、宝石サンゴでは骨格を形成する炭酸カルシウムの結晶形が異なり、前者は霰石からなるが、後者は一般に高マグネシウム方解石の骨格を持つ。近年、宝石サンゴは、海洋の中深層水の長期的環境変動を復元しうる試料として注目を集めている。本研究では、これら3つのグループの骨格にみられる炭素・酸素同位体比の挙動を解析し、その変動メカニズムについて比較検討を試みる。