本研究では,方解石の形成過程および形成環境を推察するために,花崗岩の割れ目から採取した方解石の酸素および炭素同位体比について予察的な分析を行った。その結果,酸素同位体比は概ね20‰程度の値を示した。一方,炭素同位対比についてはその値が-5から-45‰の広い範囲に分布し,従来の研究で認められていない-30‰以下の低い値を示す方解石が認められた。当該地域の地下水中の炭素は,主にHCO
3-として溶存しており,低い炭素同位対比を示す方解石はこの炭素同位対比を反映していない。このことは,地下水中に溶存しているHCO
3-以外に炭素の起源がある可能性を示しており,その起源としてメタン中の炭素が考えられる。ただし,地下深部における還元環境下でメタンが酸化するプロセスには微生物が関与する必要があり,今後はこの可能性について詳細に検討していく。
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