抄録
石灰岩などの炭酸カルシウム試料の希土類元素存在度は過去の海洋化学環境の復元にしばしば用いられる。炭酸カルシウムにはカルサイト、アラゴナイト、ファーテライトの三つの同質多形があり、天然では主にカルサイトとアラゴナイトが安定に存在している。主にカルサイトからなる石灰岩の多くはアラゴナイトからなるサンゴなどの生物性炭酸塩を起源とするものも少なくない。続成作用の過程で生物性炭酸塩がカルサイトへ再結晶化される際、希土類元素の再分配は炭酸カルシウムの結晶構造と関係していると考えられる。このような元素分配と結晶構造の関係を明らかにするために、本研究ではXAFS(X線吸収微細構造)法を用いてカルサイト及びアラゴナイトにおける希土類元素の局所構造(配位数、原子間距離)の決定を行った。天然試料の希土類元素濃度はXAFS測定を行うには低すぎるため、人工的に希土類元素を添加したカルサイト及びアラゴナイトを合成した。