抄録
最近の地球環境問題への意識の高まりを背景として、河川や湖沼などの水質変化から二酸化炭素の海洋や海底下貯留における影響評価まで、水環境に対する広汎な観測や調査のニーズが増している。電力中央研究所ではこのニーズに対応し、AUVを観測プラットフォームとして導入し、これに「鼻」となる多種の化学センサを搭載することで、水環境モニタリングや広範囲マッピングに特化した装置とした。若尊カルデラでの適用では、ドーム状地形の直上に位置する西側と斜面に位置する東側で各観測値に違いが認められる。pHデータはサイドスキャンソナーで得られた噴気泡の分布位置と関係し、噴気の成分であるCO2の溶解挙動を考える上で重要な観測結果が得られた。今回の調査に要した時間は1層あたり1時間であり、海域での広範囲の水環境のマッピング手段として、合理的で有効な手段であると考える。