抄録
鹿児島湾北部に位置する若尊火口の火口底における堆積物の熱水変質作用を明らかにするため、2008年5月に行われたKT08-9航海において5本のピストンコア採泥を行った。 本発表では得られたコア試料のうち既知の熱水域で採取し、船上に揚収直後にはまだコアの下部が暖かかったPC2コアと、海上保安庁により噴気活動の存在が指摘されている海域で採取し、コア半割時に激しい硫化水素臭のあったPC5コアを中心にコアの間隙水化学組成について報告する。 PC2の間隙水化学組成は熱水成分の混入を示すものであった。また、コアには熱水から沈殿したと考えられる脈状のst5ibniteや熱水変質によると考えられる硬化した層が観察された。 PC5の間隙水化学組成からは熱水成分の混入は認められない。しかし、硫酸イオン濃度は深度とともに顕著に減少する。有機物を電子供与体とした微生物的硫酸還元が起こっているためと考えられ、硫化物と硫酸の硫黄同位体比もそれを指示する結果であった。