世界各地で酸性雨被害が報告されており、日本国内においても栃木県・群馬県境の金精峠ならびに神奈川県大山などで酸性雨被害が見られる。しかしながら、日本においては欧州と同程度の酸性雨が観測されているにもかかわらず、その被害はさほど顕著ではない。その原因の一つとして、日本の土壌が欧米諸国の土壌と比較して、酸性雨に対する緩衝能、すなわち酸中和能(ANC; Acid Neutralization Capacity)が大きいことが挙げられる。本研究では酸中和能に最も寄与する元素の詳細な挙動を解明するために金精峠の枯損域と非枯損域の土壌をそれぞれ鉛直方向に採取し、元素分析ならびにANCを測定することでその評価を試みた。