土壌中には反応性の異なる炭素プールが混在するため、分解・蓄積プロセスやその温度依存性については未解明な点が多い。我々は、熱帯山地林の標高傾度を利用し、「異なる気候下にある生態系は、風化速度の違いから鉱物による土壌有機物の安定化作用が異なるため、鉱物粒子と結合している土壌炭素プール(重画分)と植物遺骸を主とするプール(軽画分)では、気温に対する応答は異なる」という作業仮説を、ボルネオ島キナバル山の標高700m~2700m(年平均気温:24℃~12度)に広が森林土壌A層を用いて検証した。標高が上がるに従い、軽画分の炭素蓄積量のみが増加した。森林の純一次生産と土壌炭素量から推定した土壌炭素の回転速度は、低地で数年、高地で20~30年であった。さらに、放射性同位体炭素(14C)を利用して軽画分・重画分それぞれの平均回転速度を推定し、その値と土壌鉱物特性との関係を議論する。