陸上では、火山性起源の温泉水または湧出水が高濃度の化学成分を含んだ天然の水源として知られている。本研究では、火山性湧水が河川水の水質変化および水質形成に与える影響を明らかにすることを目的とし、長野県上高地を水源にもつ梓川とその周辺域に湧出している温泉において水試料を採取し分析を行った。その結果、温泉水のECは約1000μS/cmであり、二価鉄は0.42mg/l、NH4+は8~20μmol/l検出された。温泉湧出地に隣接した河川水のECは600μS/cm前後であり、二価鉄は0.18 mg/l、NH4+は2.5~17μmol/l検出された。温泉湧出地から離れた地点の河川水のECは42~354μS/cmであり、二価鉄、NH4+は検出されなかった。よって温泉湧出地に隣接した河川水の水質は、温泉水の流入もしくは湧出による影響を受けていると考えられる。Cl≠?用いて河川水への火山性湧水寄与率を見積もったところ、62%であった。これらの結果より梓川の水質は、温泉湧出地に隣接した地点では火山性湧水の影響を顕著に受けていることが明らかとなった。