抄録
生体試料のバルクの窒素安定同位体比は、食物連鎖網の解析や栄養段階の推定などの生態学研究において、ほとんど必須のツールとして広く用いられている。しかし、食物連鎖に伴う窒素同位体比の上昇が生物ごとに大きく変動することや、一次生産者の妥当な同位体比を得ることが難しいことから、見積もられる栄養段階の誤差が常に議論の対象になってきた。ところが近年、生物に含まれるアミノ酸には、食物連鎖に伴い15Nが濃縮するものと、食物連鎖の影響を受けずに同位体比が変化しないものが存在し、両者の同位体比を比較することで、その生物の栄養段階や、食物連鎖網のベースにある生物の同位体比を精度良く見積もることができることがわかってきた。発表では、アミノ酸の窒素同位体比分析法の概要と、これまでに我々の研究室で得られた結果を紹介する。