抄録
地球のマントルの構造や進化を理解するには、微量元素やその同位体を用いて地球化学的に研究を行うことが多い。そのような元素や同位体を使った議論では、鉱物間・鉱物‐メルト間などにおける分配係数が重要であるとされてきた。しかし近年の研究では分配係数が支配するような鉱物中などではなく、鉱物と鉱物の結晶界面が微量元素の貯蔵庫として、また高速拡散経路として重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある(Hiraga et al., 2003, Hayden and Watson, 2007 など)。地球内部は結晶の集まりである巨大な多結晶体であることから、膨大な量の結晶界面が存在し、超不適合元素の貯蔵庫として無視できない。また高速拡散経路として、結晶格子内で元素濃度が平衡に達しないうちに地球内部を長距離移動することも可能にする。超不適合元素である,白金族元素やW は岩石の主要構成鉱物中にはほとんど含まれておらず、結晶界面に存在することが予想されている(Hiraga et al., 2007)。またHayden and Watson(2007)は、これらの元素の拡散について半定量的な測定を行っており、W がOs より一桁高い拡散速度を持つことを指摘している。このことは地球試料のW 同位体比に不均質が見られない(賞雅ら、2008、地球化学年会講演要氏j理由のひとつの可能性としてあげられる。本研究では、このような超不適合元素である白金族元素およびW に注目し、これらの元素についてフォルステライトなどの多結晶体中での粒界拡散速度や固溶度について求め、地球におけるコア-マントル相互作用やコア形成,マントル進化について制約を与えることを目的としている。本発表では結晶界面を含むフォルステライト多結晶体(ナノメートルサイズの結晶を使用(橘ら、2008))中のPt の固溶度について正確に求める方法の開発を試みており、その結果等について述べる。実験方法としては、ナノメートルからマイクロメートルサイズのフォルステライト結晶の多結晶体を作成し、Pt スパッタリング,合金の溶融などにより多結晶体表面にPt を散布し、高温で長時間拡散させる。表面のPt を取り除き、湿式化学分析で処理した後、ICP-MS で測定する。試料へのPt の固溶度と拡散速度からコア-マントル相互作用について考察していく予定である。