熱帯林は自然起源の成層圏オゾン破壊物質である塩化メチルの主要な発生源の一つとされているが、熱帯林の多様性ゆえに、正確な放出量の見積もりには至っていない。そこで、東南アジアの熱帯林サイトにおいて、個葉レベルおよび森林樹冠レベルにおける塩化メチルのフラックス観測を実施した。その結果、調査を行った117種の熱帯植物のうち、21%に相当する24種が塩化メチル放出植物と同定された。森林樹冠上における塩化メチルの観測からは、その濃度が高さとともに減少する傾向が見出された。この濃度勾配を傾度法(修正ボーエン比法)に適用することで、樹冠レベルでの塩化メチルフラックス(単位面積あたり、単位時間あたり)を約14 マイクログラムと推定した。得られた樹冠レベルのフラックスをグローバルに外挿したところ、全発生量の約3割に相当する約130万トンもの塩化メチルが、グローバルな熱帯林から放出されていることが示唆された。