バングラデシュのヒ素汚染地下水出現地域において,ヒ素が堆積物中に濃縮する過程を明らかにするために,地下水面の変動する深度の浅い沖積堆積物を雨季と乾季の2度採取し,化学分析を行った。その結果,総ヒ素の濃度とヒ素を固定している相は,季節間で大きな変化はなかったが,わずかに酸水酸化鉄に吸着しているヒ素の量が雨季に高くなる傾向があった。以前からの研究と合わせると,ヒ素を含む黒雲母が化学的風化作用により分解して,ヒ素を吸着した酸水酸化鉄が形成されたと説明される。また,この反応は,過剰揚水により加速されている可能性がある。