抄録
海洋の有機物の約90%は大陸棚堆積物に沈着しているため,大陸棚は二酸化炭素の吸収や保存の場として炭素循環において重要な役割を担っている。しかし,陸と海洋の物質が複雑に混合し,化学・物理過程も複雑に作用するため,有機物の起源や堆積過程など不透明な部分が多い。 オホーツク海は北太平洋西部に位置する縁辺海であり,全面積のおよそ40%は大陸棚が占める。北西部にはアムール川が流れ込み,多量の陸起源物質が大陸棚に供給される一方で,生物生産も活発である。また,大陸棚上の物質を外洋へ輸送する東サハリン海流や高密度陸棚水の存在が報告されている。本研究では,オホーツク海表層堆積物中の全有機炭素含量(TOC),炭素同位体比(δ13C,Δ14C)およびリグニンフェノール総量(Λ)を測定し.オホーツク海表層堆積物における各項目の空間分布を示し,有機炭素の起源および堆積過程を検討した。