河川堆積物の化学組成分布を地図上に表示した地球化学図は、自然由来や人為的な事象に関わる化学組成を反映していると考えられ、地表での環境指標となりうる。近年、イネやネギなどの植物の産地同定の手段としてSr同位体比が用いられるようになり、さらに、遺跡から出土された人骨のSr同位体比の測定による出身地の推定が行われつつある。地質のSr同位体比は、そこで生育している植物の、最終的には動物の骨中に反映されると考えられ、Sr同位体比の地球化学図は、生育場の同定などを行う際の基礎データとして重要である。本研究では、全国のSr同位体比の地球化学図を作成することを目的とし、九州北部と中部地域の河川堆積物を試料として、この地域のSr同位体比の分布を明らかにし、河川堆積物のSr同位体比が河川流域の地質環境を反映しているかどうかを調べた。