抄録
石筍は古環境情報を保存可能である。秋吉台における人間活動と自然との関わりを理解するため、顕微蛍光法の改良による絶対年代測定法の確立、炭素安定同位対比からの植生変遷の復元を行った。北山北の横穴、鳴穴について報告する。
顕微蛍光法にて石筍の縞の蛍光強度を計測し、石筍の炭素安定同位体比を質量分析計で測定した。
石筍の蛍光強度のピーク間隔より北山北の横穴の石筍の平均成長速度を求めると29 μm y-1であった。鳴穴に関しては約50 μm y-1と見積った。北山北の横穴の森林から草原への植生変化の絶対年代を1700年頃と決定した。鳴穴で得られた石筍の炭素安定同位体比は-2.3 ‰から-7.1 ‰へと増加し、現在は二次林であるが、1800年頃以前は草原であったことが示唆された。石筍は局所的な環境情報抽出に有用であることが分かり、秋吉台に土地利用は地点により異なる可能性が示された。