フェムト秒レーザーを利用したレーザーアブレーションICP質量分析法(fs-LA-ICPMS)の実用化にともない、金属試料中の微量元素を高感度かつ再現性よく分析することが可能となった。我々の研究グループでは、隕石に含まれる金属相(Fe-Ni合金)や様々な珪酸塩鉱物中の白金属元素、レニウム、タングステン等の濃度分析を行い、元素分配挙動に関する基礎的知見を引き出す試みを続けている。こうしたプローブ分析では、正確な定量結果を得るためには分析対象試料と化学組成が類似した標準試料が不可欠となる。しかし市販の微量元素分析用標準試料は化学組成が限定的であり、さらに我々が分析対象としている元素を網羅した標準物質は殆どない。これは特に金属質標準物質で特に深刻である。そこで本研究では、Fe-Ni合金に地球化学的に重要であると考えられる20種類の元素(Pd, Re, Mn, Ru, Ti, Cr, Mo, Au, Ge, Co, Zn, Rh, Cu, W, Pb, Pt, Cd, V,Os)を添加した金属質標準物質を合成するとともに、その化学組成的均一性をEPMAおよびfs-LA-ICPMS法を用いて評価した。