抄録
長鎖アルケノンの不飽和度は古水温計・古塩分計として海洋や陸域で広く応用されている。しかし,その細胞内の生理学的役割や不飽和度の温度・塩分相関性の理由についてはよくわかっていない。これまでに,アルケノンの生理学・生化学的な研究から,アルケノンは,不飽和脂肪酸のような温度に対して膜の流動性を制御する膜脂質成分と異なり,細胞内で遊離態成分として存在すること,アルケノンの不飽和度は細胞の温度順化に関連して変化するが,光合成活性や成長速度にも影響されること,アルケノンは貯蔵性脂質としての生理学的役割を果たしていることが,解明された。演者らも,アルケノンを合成するおもな起源種であるハプト藻の培養実験などを用いて,アルケノンの生理学・生化学的研究を行なってきた。本講演では,これらの研究成果をまとめて,現時点で提案しているアルケノンの生理学的機能や温度・塩分相関性についての議論について述べる。