抄録
海水中のトリチウムは放射壊変してヘリウム-3になる。ヘリウムの散逸が無視できるような閉鎖系を考えた場合、海水中のトリチウム濃度と同時にその娘核種であるヘリウム-3の濃度を測定すれば、海水の絶対年代を求めることができる。これまでにヘリウムのマントル起源成分の寄与が無視できる日本海においてはトリチウムーヘリウム-3年代を求めることに成功しているが、今回南太平洋において中層海水のトリチウムーヘリウム-3年代測定を試みた。その結果、ヘリウム-3の過飽和分がすべてトリチウム起源であると仮定してトリチウムーヘリウム-3年代を求めたところ、南極中層水が沈み込んでいると考えられる場所の水深500mでは約20年という年代で、他の場所に比べて若い年代を示した。