木曾御岳山周囲の温泉・鉱泉において採取した遊離ガス試料中のヘリウム同位体比の時間的・空間的変動について報告する。1984年9月に起きた長野県西部地震の震源近くのサイトでは、火口からの距離に比例してヘリウム同位体比が低下する一般的傾向から予測される値より高い同位体比が観測されていた。さらに1985年より2000年までヘリウム同位体比の増加が連続的に起こっていた。一方、震源から離れた濁河温泉など御嶽山の北西側のサイトではヘリウム同位体比の時間変動は見られなかった。ところが、2003年から2007年までのデータを見ると、震源近くのサイトでは顕著なヘリウム同位体比の低下が見られた。一方、これまで変化のなかった御嶽山北西側のサイトにおいて同位体比の増加が見られた。この一連のヘリウム同位体比の変動は、2007年1月から5月まで山頂付近で火山性地震が増えるなど御嶽山直下のマグマ活動を示している可能性が高い。