抄録
弥生時代全般にわたる日本の資料について炭素14年代測定による精確な暦年代を得るために日本産樹木年輪試料についての高精度炭素14測定を行ってきた中で、北半球の平均的な炭素14濃度とされるIntCal04と比べて日本産樹木年輪試料の炭素14濃度がAD1~2世紀において低くなっていることを確認することができた。このような炭素14濃度の違いがどのようにして起こったのかは非常に興味深く、何らかの地球規模での大気環境変動に対応していることは確実である。そして、このような違いがどのような時間的および空間的な拡がりをもっていたかを詳細に調べることにより、過去の地球環境変動についての鍵を提供する可能性を示している。ここでは、日本産樹木年輪試料についての高精度炭素14測定の結果とIntCal04との違いおよび二つの異なる日本産樹木の違いの有無を検討し、そこから考察できうる当時の環境についての考察を試みる。