抄録
本研究では、環日本海域における空気塊移行挙動解明の一助として、大陸起源の210Pbと上空大気起源の7Be降下量を日本海沿岸に位置する石川県辰口で1991年から2009年の18年間、韓国(テジョン)を含む環日本海の11都市で2000年から2001年にわたり観測した。その結果、太平洋側の都市における210Pbと7Be月間降下量は一年を通してほぼ一定であるが、日本海沿岸の都市(日本国内)では冬季に非常に多く夏季に少ないという明瞭な季節変動がみられた。テジョンでの降下量変動は太平洋側と同じ傾向を示した。さらに、冬季の210Pb・7Be降下量が多い日本海沿岸都市の中でも、特に石川県・能登半島周辺都市における異常大量降下が観察された。これは、冬季日本海で発生するメソスケール対流(Winter MCSs)が引き起こす気象イベントによりもたらされたと考えられる。発表ではENSOなどの地球規模の気象イベントも含めて、210Pbと7Be降下量の経年変化についても議論する。