抄録
多環芳香族炭化水素(PAH)は炭素質隕石から検出される代表的な有機化合物の1つであり、星間空間にも存在が示唆されていることから、隕石中のPAHの研究は宇宙における有機化合物生成過程の解明につながると期待される。本研究ではOba and Naraoka (2003)に引き続き、変質によるPAHの変化を見るために、隕石から最も多く検出されるPAHで構造異性体であるFluoranthene とPyreneを水中で加熱し同位体比の変化を調べた。また、今までPAHの分析の行われていない炭素質隕石中のPAHの分析としてSayama隕石(CM2)中のPAHの同定と定量を行った。隕石中PAHの同位体比分析とシミュレーション実験の結果を合わせることで、隕石有機物の形成・変質過程について新しい情報がもたらされることを期待している。