日本地球化学会年会要旨集
2010年度日本地球化学会第57回年会講演要旨集
セッションID: 3A06 10-02
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大気微量成分の地球化学
衛星観測を用いたアジアにおける大気化学研究
*谷本 浩志
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キーワード: 対流圏, オゾン, 一酸化炭素
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抄録

本講演では、著者が最近行ってきた研究のうち、対流圏の反応性微量気体成分に関する衛星観測を用いた大気化学研究について、その概要を報告する。(1)MOPITT衛星観測を用いた東アジアにおける一酸化炭素(CO)排出量の変化MOPITT衛星観測によるCO濃度の推移や地上観測データを用いて排出インベントリーによる推計値を検証したところ、2001年~2005年の間、中国のCO排出量の伸びは16%であるという結果が得られた。中国では、家庭での生物燃料燃焼から発電所での化石燃料燃焼へとエネルギー転換が進んだ結果、このセクターでのCO排出量は大きく減少したが、産業の急速な発展により工場からの排出が大きく増加した結果、全体としては微増傾向にあることが示唆された。(2)AIRS衛星観測を用いた西シベリアの森林火災からのCOの放出と輸送AIRS衛星観測と全球化学輸送モデルを用いて、2003年夏季のシベリアにおける森林火災がCO濃度に及ぼした影響を調べた。AIRSにより得られたCOの分布は、西シベリアから放出されて北半球に広く長距離輸送されるCOの様子を捉えており、モデルと観測の不一致から、現在広く用いられている森林火災の排出インベントリーでさえも西シベリアからの排出、特に泥炭の火災からの排出を過小評価していることが示された。(3)過去10年間のアジアにおける人為起源排出と春季対流圏オゾンのトレンド日本の清浄地域における春季対流圏オゾンのトレンドを過去10年間にわたって調べたところ、離島などの地上では統計的に有意ではない一方、標高の高い山岳地域では顕著な増加傾向が見られた。領域化学輸送モデルによるシミュレーションは概して観測された傾向をよく再現したが、山岳地域における増加傾向は約半分しか再現されなかった。観測とモデルの不一致は、モデルがアジア大陸からの人為起源排出量か、生成したオゾンの輸送量を過小評価している可能性がある。

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